2027年2月22日の朝6時少し前、アブ・シンベル大神殿の前の暗がりに数千人が立ち、ひと筋の朝日が岩の奥へ60m以上差し込んで、至聖所に座る4体の神々のうち3体を照らし出す瞬間を待つことでしょう。その2週間前には、予定どおり三日月が確認されれば、カイロの通りはラマダン最初の夜を祝うランタンで埋め尽くされているはずです。
この2つの瞬間は、2027年のエジプトのイベントを象徴しています。日常生活のグレゴリオ暦、太陰暦のイスラム暦、古いコプト暦という3つの暦が同時に動く1年で、その上に古代の天体配列と現代の祭りが重なります。そして一度きりの出来事もあります。8月2日の午後1時ごろ、ルクソールの空が約6分間暗くなると予測されているのです。今世紀に陸上から見られる皆既日食のなかでも最長クラスのひとつです。この月別カレンダーでは、いつ何が起こるか、どの日付が固定でどれが月の満ち欠けに左右されるか、そしてそれぞれが旅行者にとって混雑、休業、料金の面で何を意味するかを紹介します。
ひと目でわかる基本情報
コプト正教のクリスマス: 1月7日(木)、国の祝日
エジプシャン・マラソン(ルクソール): 1月8日(金)、ハトシェプスト女王葬祭殿をスタート
アブ・シンベルの太陽の奇跡: 2月22日(月)と10月22日(金)、日の出前後
ラマダン: 2月8日ごろから3月9日ごろまでの見込み。月の観測次第
イード・アル=フィトル: 3月9日か10日ごろの見込み
コプト正教の復活祭とシャム・エル・ナシーム: 5月2日(日)と3日(月)
イード・アル=アドハー(犠牲祭): 5月16日か17日ごろの見込み
皆既日食: 8月2日(月)。ルクソールは中心線のすぐ近く
映画祭: エル・グーナは例年10月、カイロは例年11月
日付が固定の祝日: 1月7日、1月25日、4月25日、5月1日、6月30日、7月23日、10月6日
エジプトの1年を形づくる3つの暦
エジプトの公的な生活のほとんどはグレゴリオ暦で動いており、日付が固定の祝日は毎年同じ日にやって来ます。宗教の1年は違います。イスラムの祝祭は太陽暦より約11日短い太陰暦に従うため、ラマダンと2つのイードは毎年早まっていき、各月の正確な始まりは、新月後の三日月の観測を経てエジプトのダール・アル=イフター(ファトワ庁)が確定します。2027年のエジプトのイベント一覧に載る月の満ち欠けに左右される日付は、この記事も含め、どれも天文学上の予測であり、1日ずれることがあります。
コプト正教の祝祭は教会独自の暦に従います。クリスマスは毎年1月7日ですが、復活祭は正教会の計算法によって毎年動き、その翌日の月曜日に祝われる春の祭り、シャム・エル・ナシームも一緒に動きます。もうひとつ厄介な点があります。政府は連休をつくるため、日付が固定の祝日を木曜日や日曜日に移すことがあり、その発表はわずか数週間前ということもよくあります。特定の日付が計画にとって重要なら、時期が近づいてから再確認してください。
1月:コプト正教のクリスマス、マラソン、ブックフェア
1年はピークシーズンの終わりとともに幕を開けます。43日間の断食と6日の夜の典礼を経て、コプト正教のクリスマスは1月7日(木)に訪れます。国の祝日で、銀行や官公庁は休みとなり、多くのエジプト人家族が旅行に出かけます。敬意を払いながら体験する方法は、エジプトのクリスマスと年末年始のガイドで説明しています。1月25日(月)も国の祝日で、警察記念日と2011年の革命の記念日を兼ねています。
クリスマスの翌朝、1月8日(金)には、第34回エジプシャン・マラソンがルクソール西岸のハトシェプスト女王葬祭殿を発着点に開催されます。種目は5km、12km、21km、フルマラソンの42.195kmで、いずれも7時スタートです。コースはメディネト・ハブやメムノンの巨像の脇を通り、西岸の村々を抜けていきます。2026年秋時点の参加費は約80〜91ユーロに手数料が加わります。走らない人にとってもルクソールでにぎやかな朝を過ごせる日ですが、西岸では正午ごろまで交通規制があると考えておきましょう。
カイロでは近年、カイロ国際ブックフェアが1月下旬から2月上旬にかけてニューカイロで開かれ、地元の大群衆を集めています。2027年の日程は発表され次第確認してください。ルクソールでは、ルクソール神殿の上にモスクが建つこの町の守護聖人をたたえるアブ・エル・ハッガーグのマウリドが、イスラム暦のシャアバーン月に行われます。2027年のシャアバーン月は1月9日ごろから2月7日ごろまでです。1月の最初の10日間を過ぎると海外からの人出が減って料金も下がり、月の残りは1年で最もお得な時期のひとつになります。
2月:夜明けのアブ・シンベルとラマダンの始まり
2月22日(月)、アブ・シンベル大神殿の軸線上に太陽が昇り、至聖所にあるアメン・ラー、ラー・ホルアクティ、神格化されたラムセス2世の像を約20分間照らします。一方、冥界と結びつけられた神プタハは影の中にとどまります。2026年には、祭りの日の外国人大人のチケットは1,200エジプトポンドと報告されており、通常の日は750エジプトポンドでした(約22米ドルと14米ドル)。アスワンのホテルは早くから埋まります。前後1〜2日も、少し中心を外れながら光が至聖所まで届き、人出ははるかに少なくなります。選択肢はアブ・シンベル太陽祭のガイドで説明しており、私たちのアスワン発アブ・シンベル日帰りツアーは、この太陽の配列に合わせて日程を組めます。
ヒジュラ暦1448年のラマダンは2月8日(月)ごろに始まる見込みで、今年は2月の太陽の奇跡が聖なる月の期間中にあたります。2月半ばはヨーロッパの学期途中の休暇とも重なるため、その週のナイル渓谷は前後の週よりも混み合います。
知っておくとよいこと:2027年のラマダン中の旅行
2027年のラマダンは、2月8日ごろから3月9日ごろまで続く見込みです。ラマダンで変わるのは、何かが利用できるかどうかよりも、1日のリズムです。遺跡や博物館は開いていますが、博物館は午後の半ばに閉まることが多く、一部の遺跡では開場時間が短縮されるので、観光は午前中に。官公庁や銀行は短縮営業となり、交通渋滞は日没後の食事イフタールの前の1時間が最悪です。カイロでは期間中、イフタールはおよそ17時45分から18時ごろです。
そのご褒美が夜です。通りにはファヌースと呼ばれるランタンが連なり、ホテルや歴史ある邸宅に張られたラマダン・テントではイフタールやスフール(夜明け前の食事)がふるまわれ、アズハルやハーン・ハリーリ周辺の旧市街は深夜までにぎわいます。日中、人前での飲食は控えめにしましょう。法律上の義務というより礼儀としてです。詳しくはラマダン中のエジプト旅行のガイドで紹介しています。
3月と4月:イード・アル=フィトルと春の陽気
ラマダンはイード・アル=フィトルで締めくくられ、月の観測次第で3月9日か10日ごろになる見込みです。政府はたいてい3日以上の休日を宣言し、1年のうちでも国内旅行が大きく盛り上がる時期のひとつになります。列車、長距離バス、紅海のリゾートはエジプト人家族でいっぱいになり、カイロの公園やナイル川沿いの遊歩道も人で埋まります。遺跡は開いていますが地元の訪問者で混み合い、家族は子どもたちに新しい服とちょっとしたお小遣いを贈ります。
4月はハイシーズンの暖かい終盤です。南部は急速に暑くなり、月末にはルクソールとアスワンで午後に30度台半ば(華氏90度台半ば)に達する日もあります。一方、紅海は水温が上がりつつあり、砂漠は日中もまだ快適です。3月から5月にかけては、熱く砂ぼこりを含んだ風ハムシンの季節でもあり、一度吹くと1〜2日続くことがあります。4月25日(日)のシナイ解放記念日は国の祝日で、1982年にイスラエルがシナイ半島から最終的に撤退したことを記念しています。
5月:コプト正教の復活祭、シャム・エル・ナシーム、イード・アル=アドハー
2027年の5月は、珍しく祝日が立て込んでいます。5月1日(土)のメーデーに続いて、5月2日(日)がコプト正教の復活祭、5月3日(月)がシャム・エル・ナシームです。シャム・エル・ナシームは、エジプト人がファラオの時代にまでさかのぼるとする春の祭りで、イスラム教徒もキリスト教徒も同じように祝います。家族はピクニックの支度をして公園やナイル川の岸辺、動物園に出かけ、塩漬けにして発酵させたボラ、フェシーフを、青ネギや色を塗った卵と一緒に食べます。出かけるには楽しい日ですが、カイロの緑地はどこも人でいっぱいになります。
犠牲祭イード・アル=アドハーは5月16日か17日ごろの見込みで、その前日はアラファの日です。休暇はふつう4〜5日続き、1年のもうひとつの大移動の時期となります。その数日前には、街なかで家畜が売られている光景を目にするかもしれません。旅程が重なるなら、列車、国内線、海辺のホテルは早めに予約しましょう。
警告:イード前後は下調べなしで予約しない
2つのイードとシャム・エル・ナシームは目にするだけで素晴らしいものですが、詰め込んだ旅程には厳しい時期です。寝台列車、国内線、紅海のホテルはエジプト人旅行者で売り切れ、海辺のリゾートの料金は上がり、ギザ台地やカイロの博物館といった人気の観光地は1年で最も多くの地元客でにぎわいます。イードの日付は前日ごろにならないと確定しないので、余裕を持たせましょう。イードの初日には、長距離の移動、国際線の乗り継ぎ、ほかに代えのきかない見学を予定に入れるのは避け、どうしても外せないものはかなり前に予約しておきましょう。
6〜8月:イスラム暦の新年、ナイルの増水、日食
夏は国内旅行者の季節です。ヒジュラ暦1449年の新年は6月6日ごろの見込みで、静かな祝日です。続いて2013年の抗議行動を記念する6月30日、1952年の革命を記念する7月23日(金)の革命記念日があります。地中海沿いの北海岸は最もにぎわう一方、南部は非常に暑く、ルクソールとアスワンでは40度(104F)を超える日が珍しくありません。夏の旅を成り立たせる方法は夏のエジプト旅行ガイドで説明しています。
預言者生誕祭(マウリド・アンナビー)は8月14日か15日ごろの見込みです。祝日で、菓子店には、この季節にしか作られない砂糖とナッツの菓子ハラーウェト・エル・マウリドや、子ども向けの砂糖人形がずらりと並びます。8月半ばは伝統的に、ナイル川の増水を祝う古くからの祭りワファー・エル・ニールの時期でもありますが、今ではかつてのような大祭ではなく、ささやかな文化行事になっています。
ご存じですか:ルクソール上空の6分間の皆既日食
2027年8月2日(月)、皆既日食が北アフリカとアラビア半島を横切り、食が最大となる地点はエジプト南部、ルクソールの近くです。そこでの皆既は約6分間続くと予測されており、今世紀に陸上で見られるもののなかでも最長クラスで、月の影は正午ごろにやって来ます。もともと太陽の動きに合わせて配置されたカルナック神殿とルクソール神殿は、類を見ない舞台となるでしょう。
ただし1年で最も暑い時期でもあり、ルクソールの宿泊施設はかなり前から埋まると予想されています。その場にいたいなら、今から計画を立て、払い戻し可能な部屋を早めに予約し、認証を受けた日食グラスを用意し、旅のほかの部分は早朝の行動と午後の長い休憩を軸に組み立てましょう。日が近づいたら、詳しいアドバイスを掲載します。
9月と10月:映画、マウリド、ふたたびアブ・シンベル
9月は暑いものの季節は移り変わりつつあり、10月には南部もまた快適になります。10月6日(水)の軍隊記念日は、1973年の戦争でのスエズ運河渡河を記念する国の祝日です。フルガダの北、紅海沿岸のエル・グーナ映画祭は、近年は10月後半に開かれており(2026年は10月15日から23日)、2026年秋時点で2027年の日程は発表されていませんでした。リゾートそのものについてはエル・グーナ旅行ガイドで紹介しています。
10月22日(金)には2回目のアブ・シンベルの太陽の奇跡があり、ハイシーズンにあたるため2月よりも混み合います。10月はデルタ地帯のマウリドの季節でもあります。カイロの北約90kmのタンタで行われるサイイド・アフマド・アル・バダウィーのマウリドはエジプト最大級の宗教的な集まりのひとつで、数十万人規模の人出が伝えられるのが常であり、日程は毎年地元で決められます。シワでは、宴と和解の祭りシヤーハが10月の満月のころに開かれます。2027年の10月の満月は月の半ばで、日程は地元で決められ、発表は直前になります。近年の秋には、アール・デジプトがピラミッドの周囲で開催する大規模な現代美術展「フォーエバー・イズ・ナウ」もギザ台地で開かれています。これを目当てに計画を立てる前に、2027年の開催が確定しているかを確認してください。
11月と12月:カイロの映画祭と年末年始
1976年に創設されたカイロ国際映画祭は、この地域で数少ない国際映画製作者連盟(FIAPF)のAカテゴリー認定を受けた映画祭で、カイロ・オペラハウスを拠点にしています。第47回は2026年11月11日から20日まで開催され、次回も例年どおり2027年11月の見込みです。一般公開される上映も多く、旅行者も気軽に夜の時間を楽しめます。音楽好きならカイロ・ジャズ・フェスティバルにも注目を。執筆時点で2027年の日程は発表されていませんでした。
11月は私たちが1年でいちばん好きな月です。暖かい日々が続き、紅海は穏やかで、人出もまだピークに達していません。12月に入ると年末年始の2週間に向けて盛り上がり、ホテルやクルーズの料金は秋の水準より30〜50パーセント上がることがあります。2027年12月25日(土)のクリスマスは、エジプトでは祝日ではありません。この季節については冬のエジプト旅行ガイドで月ごとに紹介しています。
現地ならではのヒント:祝日に実際に閉まるもの
エジプトの祝日についての朗報は、旅行者が見に来るものはめったに閉まらないということです。遺跡、主要な博物館、ホテル、レストラン、ナイル川クルーズはおおむね通常どおり営業しますが、エジプト人の訪問者で混み合います。閉まるのは銀行、官公庁、地元の多くの商店、そして宗教上の祝日には一部の小さな店です。ビザの延長、銀行での用事など役所が絡むことは通常の平日に済ませましょう。また、週の主な休日は金曜日で、土曜日がそれに次ぐことも覚えておいてください。
2027年のエジプトのイベントに合わせた旅の計画
最も充実した旅程は、すべてを追いかけるのではなく、ゆとりのある旅に1つか2つのイベントを組み込んだものです。2月の旅なら、アブ・シンベルの太陽の奇跡にルクソールとアスワンを結ぶナイル川クルーズと、ラマダン中のカイロの夜を組み合わせられます。1月の旅なら、オールドカイロでのコプト正教のクリスマスとルクソールのマラソンの朝に、西岸をまる1日巡るツアーを続けられます。日食はそれだけで1回の旅になります。
2027年のエジプトのイベントカレンダーでどの日付が目に留まったとしても、イベントそのものより、その前後の手配のほうが重要です。真っ先に埋まるのはホテル、列車、送迎だからです。気になる日付をお知らせください。どれくらい混み合うか、そしてその日を軸にどう旅を組み立てるかを、正直にお伝えします。






